第一弾「真実性を追う」の序論

最初に「リャンチュウ(梁祝)伝説」に触れたのは留学生の漢語学習教材の中の一つの課の文章が始まりである。その課の内容はリャンシャンボ(Liang shan bo)梁山伯と、チュウインタイ(Zhu ying tai)祝英台という17歳前後の男女の痛ましくも壮絶なそして読むものを感動させる美しい物語であった。しかし筆者はこの伝説(物語)の内容に関して数々の疑問を持つようになった。

この物語は一体いつの時代に起きた物語なのか?
また一体どのような場所、地方で生まれたのか?
教材の文章の中にあげられている「杭州」以外のどこにこの物語の痕跡が残っているのか?
17歳の青春真っ盛りの令嬢がこともあろうに男装してまで千里はるばる何を勉強しに出かけたのか?
もし仮に墓に赴き蝶に化身する伝説が実際に起こったとするなら、その墳墓はいったいどこに存在するのか?

これらの一連の疑問を持ちながらも筆者はリャンシャンボ(Liang shan bo)梁山伯とチュウインタイ(Zhu ying tai)祝英台の伝説(物語)の真偽に新鮮で深い興味を持つようになったのである。そこで、筆者は「中国人の意識における「リャンチュウ(梁祝)伝説」というアンケート調査を実施することを計画した。このアンケート調査は全部で335人にのぼる人たちの回答を得た。このアンケート調査の結果は筆者に「リャンチュウ(梁祝)伝説」が一つのとても美しい愛の物語のシンボルとして千年以上の長きにわたり中国の大多数の人たちの精神世界に生命力を保ち続け,重要な位置を占めていることを知らしめることとなった。そこで筆者は一人の中国への留学生として、この貴重な中国伝統文化にとても深い興味を持つに至った。この壮絶な美しい伝説をさらにより深く理解するため筆者は5月の労働節(メーデー)連休を利用して教科の課文で唯一言及されている場所「杭州」に出かけた。

「杭州」に来てから,筆者はそこでこの伝説(物語)に関係する沢山の地名,場所の存在を知り、耳にすることとなった。例えば、shangyu上虞市のチュウインタイ(Zhu ying tai)祝英台の里、さらに寧波の「リャンチュウ(梁祝)文化公園」などである。そこで筆者はこの二つの地点を訪ね、そこで数多くの価値のある資料を見出した。寧波の「リャンチュウ(梁祝)公園の展示陳列室で、筆者は中国各地のリャンチュウ(梁祝)の墳墓が全てで10カ所あり、「リャンチュウ(梁祝)」二人の学習地点が6カ所あり、さらに別に一つ「リャンシャンボ梁山伯の廟」が一つあることを知った。またリャンチュウ(梁祝)公園の中のリャンシャンボ梁山伯の壁画に筆者は特に注目した。この“リャンシャンボ゙梁山伯の壁画はとても荘重で、美しい浪漫な愛情物語の主人公とは似ても似つかず、むしろとても真面目に深遠な理想を抱いて仕事をしている若者のように思えたのであった。
そこで筆者は考えた、
リャンシャンボ梁山伯とは一体如何なる人物なのか?
リャンチュウ梁祝伝説が語り継がれる時間の中で枯渇した、別の伝承があるのか?

このような一連の疑問を持ち、筆者はリャンチュウ梁祝伝説を再検証し、その背後にも光を照らして理解に至ろうと各種の文献資料を調べることを開始したのである。少しばかりの理論上の準備をした後、筆者は夏休みを利用して全国各地のリャンチュウ(梁祝)伝説の墳墓遺跡の実踏調査を開始した。 実踏調査開始の初期においては筆者はリャンチュウ(梁祝)故事の真実性についてはっきりとした確信は無かった。しかし実踏場所が少しずつ多くなり、関係資料の理解が次第に深まるにつれ、筆者の見方は徐々に変化し始めた。大多数の中国の人たちと同じように、筆者はリャンチュウ(梁祝)故事は単なる単純な一つの愛情物語と考えていたのである。間違いなくリャンチュウ(梁祝)故事は愛の伝説として形作られ民間伝承として連綿と伝えられて来たのである。

しかし寧波のリャンチュウ(梁祝)公園内のリャンシャンボ梁山伯のあの壁画はことさらまるでリャンチュウ(梁祝)故事はそんなに単純ではないことを訴えかけているかのようであった。筆者が実踏調査で知ったことは、伝説の中の10カ所の墳墓で実際に存在したのは江蘇省宣興市の善巻洞(チュウインタイZhu ying tai祝英台の墓のみ)、浙江省寧波イン県高橋現リャンチュウ梁祝文化公園(合葬墓)、河南省汝南(二つに分かれた墓)のわずかに三カ所なのである。またこれらのかっての伝説の痕跡を残す場所、寧波で筆者は一人のリャンチュウ(梁祝)故事研究の権威「周静書」先生を訪ねたとき、そこで一つの興味深い話を聞いた、それは“リャンシャンボ梁山伯は学業を終えて後、寧波イン県の県知事に推挙され一年あまり役人として仕事し、当地の民衆の為に尽くしその後、イン県の知事として殉職した”と言うのである。 
この話を聞き筆者は意外な思いにとらわれた、リャンチュウ(梁祝)愛情故事の背後になんとまだこのような伝説があろうとは思いもよらないことであった。

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